アラサーの知ったか日記

気になったことをしったかぶって書いていくだけです。

深夜の東急田園都市線で盛大なフェイントを喰らった件


その日は旧友と新宿で飲み、友人に泊めてもらう予定だった。


本当は東急東横線で帰るのがスマートなのだが、人身事故で止まっていて東急田園都市線で迂回することになった。こればかりは仕方がない。迂回路があるだけ東京はマシなのである。私は愛知県の片田舎に住んでいるから、通ってる電車が止まったらその時点で試合終了、諦めるしかない。


それにしても金曜日の23時過ぎである。翌日からお盆休みである。そんな車内は恐ろしい。


中々座れない、というよりむしろ混雑している中で、つり革に片腕突っ込んで寝落ちしている男がいた。明らかに呑んで帰っています、という風情である。電車が揺れるたびに体も大きく揺れ、少しだけ目を覚ましてまた目を瞑って…。見るからに危ないし、周りも無言であるがそう思っているのだろう。みんなそちらをチラチラと見ている。


しかも片手には酎ハイかなにかの缶を持っている。目を覚ましたタイミングでまるで水かのようにそれを一口煽るのである。流石に友人と2人で顔を見合わせて苦笑いしてしまった。


これはいつ何があってもおかしくないな、などと思っていたら、我々から見てその男から逆方向より「すいません…すいません…」とか細い女性の声が聴こえてきた。そしてそちらから少しずつ液体が流れてきた。


何かと思えばその女性の方が吐いていたのである。おい、そっちかよ!などと考えている間にも電車は止まらない。その女性はかなり若く、おそらく新入社員か2年目くらいだろう。涙目になってすいませんと謝りまくっている。


こりゃかわいそうに、などと2人で顔を見合わせてたら次の駅に着いた。そうすると先ほどの男が割合しっかりと電車を降りていくのが見えた。心の中で大丈夫なのかよと突っ込むのは良いが、良くないのはそっちの女性である。


より近くにいたリーマンが取り敢えず席を譲って落ち着かせる。何人かは現場から離れてしまったものだから我々も相対的に近くなる。相変わらず女性は涙目で謝りまくっている。


リーマンがティッシュを渡す。友人もティッシュを渡す。別のリーマンはウエットティッシュを渡す。優しい世界である。女性は涙目で謝りながらお礼を言っている。我々とリーマンは目が合ってお互いに苦笑する。お盆前の金曜日の23時過ぎ、スーツの上着無しみたいな格好をしているのである。お互い何も言わずとも何があったかは大体分かる。だから怒る人はいない。個人的にはむしろよく頑張ったと思う。付き合いは大変だよな。


それにしても私はその間、「これ、私が同じことやったら殺されるんだろうなぁ」とか、「ティッシュ渡しすぎじゃない?」とか友人に笑いながらボソボソと話しかけているのである。我ながら何という奴であろうか。


ともあれ、我々は目的の駅に着いたようだ。ふと下を見ると私の足元まで流れてきて普通に踏んでいた。仕方がない。ティッシュを持っていなかった罰であろう。我々は電車を降りたが、その女性はそのまま座っていた。無事に帰れたら良いのであるが、行く末は知るよしもない。


見てはいないと思うが、その女性に言いたいのは、この事なんて今後の笑い話にするのが1番である。実害は無かったし、みんな怒ってなんかいない。だから前を向いて歩いて欲しい。東急の人には怒られたかもしれないけど。


最後に言いたいこと。


涙目になりながら何かをする女性というのは、これほどまでにグッと来るものだなと思うのである。その女性は必死だというのに、本当に私は最低な人間である。